D&Dショートストーリー
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惨劇は、ひとつの終わりから始まった。

それは、杭だった。
禍々しい血を吸い、歪んだ成れの果てだったとしても。

それは、封印だった。
赤く黒く汚されたとしても、大いなる厄災を縫いとめる楔だった。




ある日、数人の冒険者が集落を訪れた。
その集落が迷宮にあり、住んでいたのが異形の一族であったということを除けば、変哲の無い出来事。
しかし冒険者たちは、モンスターと分類される住民と揉め事を起こすことなく、さらには一族の小さな戦士を同行させ、迷宮の奥へと進んでいった。


冒険者たちは、一族の守り神を助け、狂気のドルイドを倒し、血塗られた巨木を焼き払った。

数日の滞在のあと、自らの目的を果たした冒険者たちは小さな戦士に別れを告げた。
小さな戦士は、涙ながらに彼らを見送り、必ず立派な戦士になって再び会うと胸に誓った。


そして、集落に平穏が訪れる。
つかの間の。
最後の。
平穏が。


闇の奥底で、厄災が目を醒ます。


訪れは突然だった。
永い眠りで飢えた厄災は、容赦なく集落を貪った。
仇敵との戦いで、戦士の大半を失っていた一族はなすすべも無く倒れていった。
強大な焔にまかれて死んでいった者は、むしろ幸せだったろう。
不幸なのは、厄災の足元に倒れた者たちだった。

死して尚、行使される者たち。
かつての同胞を、命令されるがままに襲う者たち。

そこには、滅びしかなかった。


小さな戦士は、冒険者たちとの冒険で強くなった力で、一族を守ろうと戦った。
かつて守りきれずに守り神を奪われた時の悔しさと情けなさが、さらに力を与えた。
しかし、厄災に傷を与えることは出来ず。

生きて立つ者は、誰もいなくなった。


そう遠くないかつて、冒険者たちとの再会を誓ったそこで、小さな戦士は復讐を誓った。
一族の安住の地として選んだ地は、血塗られた墓場となった。
無様に生きながらえたと嘆く彼は、しかし今度こそ守り通した未だ幼い守り神と共に。
厄災を倒す術と力を求め、姿をくらました仇を追い、旅立った。


目指すは、遥かな地。
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